右のグラフは、代表的な環境アレルゲンに対する皮内テストの陽性率を示したものです。現在の国立病院機構相模原病院のアレルギー外来を、1999年4月から2004年3月の5年間に受診された1912名の患者さんが対象です。このグラフからわかるように、ダニとスギ花粉に対する陽性率が群を抜いています。
わが国では一部の地域を除いて、室内のダニと室外のスギ花粉が環境アレルゲンの両横綱です。
(日本予防医学協会 知っているようでしらないアレルゲンQ&Aより転載)
ぜんそく・花粉症・鼻炎・結膜炎などの症状を自覚していても、ダニアレルゲンがその原因となっている可能性があることを知っている人は少ないと思います。
ダニアレルゲンの原因になるチリダニは、日本のように暖かく湿度が多い環境が大好きです。最近では住宅環境も高気密化、高断熱化しているので、冬の季節でもダニが増える環境が揃っています。
アレルギーの原因になるダニ(チリダニ科のダニ)は温暖で湿気の多い気候を好み、気温が25℃、湿度が75%のときに最もよく繁殖します。そのため、日本のような温暖な島国や、大陸でも温暖な沿岸部はダニの成育に最適な環境なのです。
このような地域では、普通に生活をしていても室内はダニアレルゲンで容易に汚染されてしまいます。家の中がゴミだらけでしかも湿気が多ければ、ダニにとっては天国で汚染はどんどん進行します。
特に、最近の高気密化、高断熱化された建物では、冬でも温度・湿度が一定のレベルに保たれるため、1年中ダニが増え続けることになります。世界各地の一般家庭寝具中Der 1量の比較データをグラフに示しました。日本は世界でも有数のダニ汚染地域であることが理解できると思います。これまでに世界各地で行われたさまざまな調査によって、ハウスダスト1g中に含まれるDer 1量が2μgを超えると、その家に住んでいる人がダニアレルゲンに感作されるリスクが非常に高くなることが確かめられています。
グラフにあるように、日本ではほとんどの家庭で2μgを超えています。このために、アレルギー素因のある方の多くは、普通に生活をしていてもダニに感作されてアレルギーを発症してしまうということになります。
(日本予防医学協会 知っているようでしらないアレルゲンQ&Aより転載)
昔は、人を刺すツメダニの数が多かったのですが、最近では、ダニアレルゲンの原因になるチリダニの数が増えました。チリダニは暖かくて湿度の高いくらい場所を好みます。そのため住宅性能の向上(高気密・高断熱)とともに、チリダニが増加する環境になってしまいました。
暖かく、湿度がある場所が大好きなダニは、布団が大好きです。人が布団で寝ていると、体温で布団はあたたかくなり、汗をかきます。ダニにとっては、布団の中は1番快適な環境なのです。
神奈川県衛生研究所が行った調査では、34世帯の内、44%の世帯がWHOの汚染基準値以上のアレルゲン量を示しました。
平均 | 範囲 | ||
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寝具 | マットレス | 69 | 25~4,263 |
毛布 | 58 | 23~1,658 | |
敷き毛布(綿)・表面 | 100 | 45~2,574 | |
敷き毛布(綿)・内部 | 約100,000 (死骸が多い) |
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ウレタン布団・表面 | 5 |
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ウレタン布団・内部 | 16 | ||
防ダニ布団 | 1,500 | 4~231 | |
床材 | 床 | 35 | 14~57 |
(匹/1m2あたり) |
ダニの数が多い布団には、アレルゲンの数も多い事がグラフからわかります。家庭の中でダニがたくさん発生する布団を清潔にする事は、ダニアレルゲンの量を減らす事につながります。
人のフケやアカ、皮脂汚れは、ダニのエサとなっています。そのままにしておくと、ダニは増え続けることになります。特に長期間保存するときは要注意です。布団を長期間しまう時、丸洗いせずにしまっていた後は、布団を丸洗いして、中わたまで清潔な状態にしましょう。
ダニが繁殖しやすい気候である上に、毎日使う布団を丸洗いする習慣が定着していない日本は、ダニにとって好都合な環境なのです。